2年ぶりに来日したマーク・ゴンザレスに問う──スケートとアート | Interviews

伝説的スケーターでありアーティストであるというふたつの面を持ったレジェンドの哲学に触れる

アート
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「世界で最も影響力のあるスケーターは?」と聞かれたら間違いなくマーク・ゴンザレス(Mark Gonzales)、彼の名前が出てくるだろう。現代のストリートスケートのパイオニアであり、アーティストとしての側面も持つ彼が、約2年ぶりに来日し、原宿の『SO1』にて、個展『NO TROUBLE』を開催する。期間は、2025年5月9日(金)から5月14日(水)まで。

マーク・ゴンザレスは、13歳の時にスケートボードを始める。そして15歳の時に、伝説的スケートボードクルー Bones Brigade(ボーンズ・ブリゲード)のメンバーでありミュージシャンの1面も持つトミー・ゲレロ(Tommy Guerrero)や、〈101 Skateboards(ワンオーワン)〉の創設者であるナタス・カウパス(Natas Kaupas)らとの出会いがきっかけで、ストリートスケートのスタイルを確立していった。1985年に、プロスケーターとしてデビューを飾り、1989年には、スティーブ・ロッコ(Steve Rocco)とともにスケートデッキブランド〈BLIND SKATEBOARDS(ブラインド スケートボード)〉を設立。映画監督 スパイク・ジョーンズ(スパイク・ジョーンズ)が撮影した1991年に公開のスケートビデオ “Video Days”は、今もなお名作として語り継がれている。

スケーターとしての華々しいキャリアはもちろんだが、アーティストとしても活動するマーク。これまでに詩集『Broken Poems』や『High Tech Poetry』などを出版。また、〈Supreme〉の店舗デザインも手掛けており、『Supreme Shibuya』で見かけるマーライオンのオブジェも彼のデザインだ。他にも〈TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.(タカヒロミヤシタザソロイスト.)〉と〈SUICOKE(スイコック)〉とのコラボレーションから、〈adidas(アディダス)〉や〈XLARGE(エクストララージ)〉といったブランドに至るまで、これまで数々のコラボレーションを仕掛けては、多くのファンの心に残るアイテムをリリースした。他にも、映画『Gummo』に出演したり、スパイク・ジョーンズと共に短編映画『How They Get There』の脚本を手がけるなど、マルチに活躍。今回『Hypebeast』は、そんな彼が久々に日本を訪れたこの貴重な機会に、短いながらも濃い内容が伴ったインタビューを敢行。スケーターの自由とアーティストの自由、デザインプロセスとストリートにおける美学を解剖するかのような、彼のリアルな言葉をお届けしたい。


批判を恐れたりせず自分の思うままに表現すること
それが今の創作の原動力です

Hypebeast:日本では8回目の展示会となりますが、日本にはどのような印象をお持ちですか?

マーク・ゴンザレス:毎回、作品の内容は違うんですが、日本で展示できることはいつも楽しみですね。とくに自分にとって、日本のアートシーンがすごく刺激的です。今回もリサーチするのが楽しみです。

今回の展示『NO TROUBLE』というタイトルの由来はなんですか?

今回の作品は、ちょっとユニークというか……。おしっこやうんちといったトイレにまつわる描写もあるので、何か問題が起きないように(笑)。タイトルを“No Trouble(問題なし)”にすることで、伏線として仕込んでいました。

普段の制作プロセスについて教えてください。

インスピレーションがどこから来るかは本当にそのとき次第です。子どもたちからもらうこともあれば、犬とか、日常のちょっとしたことがきっかけになることもあります。

ちなみに、最近インスピレーションを得たものはありますか?

最近は自由! 自由な表現を意識していますね。誰かに遠慮したり、批判を恐れたりせず、自分の思うままに表現すること。それが今の創作の原動力です。

この『NO TROUBLE』を通して伝えたいことを教えてください。

見た人が「自分も何かを作ってみたい」と思ってくれたら、それが一番うれしいです。アートって特別なものじゃなくて、誰にでもできるんだって感じてもらえたらいいなと思っています。

スケートについてお聞きしたいのですが、近年の日本のスケーターで注目している人はいますか?

三本木心という日本人スケーターがいて、『Instagram』で彼の映像を見たんですが、すごくいいですね。スタイルが独特で、本当に好きです。

 

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スケートボードとアート、似て非なるクリエイティブではありますが、マークさんの中で共通項のようなものはありますか?

やっぱり“自由”なところですかね。スケートもアートも、自分の思うままに動けるし描ける、表現できる。それが最大の魅力だと思います。

なるほど。これまでのスケートボードの経験がアートに影響していることはありますか?

これまでの展示作品の中にもスケーターを描いたものがあります。スケートの動きそのものがインスピレーションになることもありますし、先ほども話した通りスケートを通して得られる“自由さ”も作品に影響しています。スケーターって、自由でなんでもできる。それがアートにおける表現にもつながってます。

ありがとうございます。マークさんがスケートで活躍していた1990年代と今のスケートカルチャーにおける違いはありますか?

1990年代のスケーターは、カルチャーの“出どころ”にすごく敏感でした。「これはどこから来たのか」とか、背景をちゃんと理解しようとしていた。今は、ただ「これがカッコいいから」って感じで、あまり深く考えずに楽しんでる印象があります。でも、それはそれでいいと思います。もっと自由になったとも言えるし。

ご自身のアートがファッションの一部として扱われることがあるかと思いますが、その点は何か思うことなどありますか?

コントロールできるものではないので、逆らうより一緒に楽しんでいます。影響力があること自体は、すごく面白いことですよね。

近年の日本のスケーターについて、特にオリンピックからストリートシーンまでの動きをどう見ていますか?

日本は、パークとかを見るとバート(垂直に近いランプ)が人気あるイメージがありますね。540(空中で1回転半させる技)や900(空中で2回転半させる技)など大技を見られることがとても見どころだと思っています。

最後に、一言をお願いします。

『DOVER STREET MARKET GINZA』から『The Last Gallery』、パートナーのティア・ロマノ(Tia Romano)、愛犬のサルに感謝の気持ちを伝えたいです。ありがとう!

MARK GONZALES 『NO TROUBLE』展
Produced by The Last Gallery

会場:SO1
住所:東京都渋谷区神宮前6丁目14-15
会期:2025年5月9日(金)から5月14日
時間:11:00-19:00
Instagram:@the_last_gallery

The Last Gallery
ファッション・カルチャー誌『DUNE』の編集長である林文浩が2009年に、東京・白金に開設したアートギャラリーである『The Last Gallery』。グラフィティ、アンダーグラウンドカルチャー、現代アートなど、ジャンルを超えた多様な表現を紹介する場として知られている。2010年には、『DUNE』創刊17周年を記念した回顧展『UNDERGROUND SPIRITUAL GAME』が開催され、世界中のアーティストによる作品や未公開プリント、ポスターなどが展示。2012年には『PURPLE FASHION』誌創刊20周年を記念した『NOCTURNAL DREAM』展が開催され、オリヴィエ・ザーム(Olivier Zahm)主導のもと、鈴木親、森山大道、ヒロミックス、新津保建秀、佐内正史、ホンマタカシなどの名だたる日本人フォトグラファーの作品が展示された。今回2年ぶりの展示となったマーク・ゴンザレスとは、2010年よりパートナーシップを結び、これまでに日本で7回に渡りエキシビションを共に実現。『The Last Gallery』は、現在ギャラリースペースを持たず、アートプロジェクト・コレクティブとして活動を展開。国内外で多種多様な展覧会の企画・運営を行なっている。

 

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テキスト
インタビュアー
Moriguchi Noriaki/Hypebeast
Writer
Ayumu Nakamura/Hypebeast
フォトグラファー
Yuki Kawaguchi/Hypebeast
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